愛は沈黙している

イースター、ということもあり、遠藤周作の「沈黙」を読んでいました。

「沈黙」は江戸時代にキリスト教が弾圧されるなか、布教に来たイエズス会の司祭のお話です。司祭であるにもかかわらず、捕らえられた彼は役人の要求のもと「踏み絵」をする-というお話です。

大好きな人、尊敬する人の顔写真を踏むことはできますか?
私は…うーん、今のところできないです。

ですから、当然この司祭も大きく苦悩します。
そうは簡単に「はい、ふんじゃいまーす」といって踏む訳ではありません。

踏絵を決断することになったのは、踏み絵の中のイエスからこの声が聞こえたからでした。

「踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ。」

イエスによる許しの声。
弱さによる痛みを受容する声です。

今、この話に出会えてよかったなあと思います。
若い時のわたしだったら、この話を理解することはできなかったと思うのです。

踏絵を踏んだ司祭に対して「つらかったんだろうな」と同情はしたでしょう。けれど、心の奥底で「任務を全うしなかった人」と冷たいレッテルをはっていたような気もするのです。

弱いもののために主が、そして神がある、という話をきいたとき、若い頃の私はどうにもそれを理解できませんでした。そんなのずるいじゃないか、と思っていたのです。

頑張って弱くならないようにしている人はどうして救われないのか?立場がないじゃないか、と内心怒っていました(怒っていることに気づいてなかったけどね:笑)

キリストを死刑においやることとなったユダについては「裏切り者」扱い。銀貨30枚とひきかえにキリストについての情報を役人に提供するなんて「恩を仇で返す奴」と快く思っていませんでした。「金に目がくらむ」弱さを汚らわしいと思ってた。中二病だな(笑)。

けれど、それは私が自分の中の弱さに全く向き合っていなかったからなのだな、と今になって思うのです。私が自分の中にある弱さを認めていなかったから、「弱い人」を快く思っていなかったのでした。

自分の中にある弱さが、他者の弱さを責めさせていたのです。
そしてその弱さに全く気づいていなかった。
(じゃーん、おなじみの皆様は気づいてますね?これは「投影」です!)

そもそも「頑張って弱くならないようにしている人はどうして救われないのか?」って、「弱くならないようにしている」ってことはその人は「弱い人」なんですよね。だからそういう人は「救われる」んです。そこに気づいてなかったのですね。あ、ちなみに「頑張って弱くならないようにしている人」とは自分自身のことを指してました。

そして、おそらく私のなかにもユダのような部分があるのでしょう。これまでそういうことはしていないで済んでいるのは、たまたまそういう境遇にたまたま出くわしていないからだけのことです。

物語の中の登場人物とはいえ、今はユダに対しても、それから踏み絵をした司教に対して駆け寄ってハグしたい気すらします。彼らへの赦しは、自分自身への赦しでもあります。
誤解し無いでいただきたいのですが、「赦せない人を赦しましょう」といっているのではありません。自分の中の赦せない部分を赦すと、そういう他人に対して自ずから赦しがおきる-ということです。心の仕組みからいえば、自然なことです。

「沈黙」は一部では禁書扱いされたとそうです。「司教の踏み絵はオッケーです♪」なんてキリスト教としてはありえない話でしょうから。

ただ「司教は踏み絵をしてはならない」は、「思考」に基づく裁きに過ぎない。
そして「(キリストによる)踏みなさい」という声は「愛」の証です。

世界には様々な宗教があります。そのいずれも、教えや戒律があるでしょう。そうした教えや戒律はもともと「愛」から生まれたのだろう、と私は思うのです。人々が、生きやすく、過ごしやすくするためにうまれた最低限のきまり。それがいつのまにか、「正しさ」という思考になると、緊張感や恐れを生み出し、愛が見えなくなってゆく。

タイトルの「沈黙」は、「苦悩にあるとき、神は(いなかったのではなく)沈黙しながら、共にいる」という意味だそうです。音のないもの、見えないものを認識することは難しいですね。けれどそれは「ない」のではない。ただ、苦悩の世界の中に入り込んでしまって、みえないだけで。

この「神」は「愛」といいかえてもいいのかもしれません。自分の中の弱さを自分自身に許し明け渡した時、敵は消えるでしょう。そこには、ただ「相手」があり、沈黙していた愛が姿をあらわす。

そして「神との対話」は、「内なる自分自身との対話」なのだろうな、と思います。たぶんね。

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